祖母の腕時計は祖母のプライドがつまったものでした。

「この腕時計、貴方にあげるわ。」と祖母から言われた時、ありがとうとは言ったものの、そんなに嬉しくありませんでした。当時、高校生だった私は、祖母の時計はただ単に古ぼけた腕時計に見えたし、使えないよと思いました。

その数年後、祖母は他界しました。腕時計のことは、息子の父にも言いおいたようで、私の元にその腕時計は来ました。どうしようと正直思いましたが、そのままの状態でポンと置いておくわけにも行かないので、ハンカチに包んで机の引き出しにしまいました。

その後、私は一人暮らしを始め、もうすっかり祖母の腕時計のことなど、忘れていたのですが、つい先日、実家に戻り、机の引き出しの中を整理していたら、私がしまったそのままの状態で、祖母の腕時計が出てきました。久しぶりに見る腕時計は、アンティーク感があって素敵に見えました。

その日の夕方、その腕時計のことが話題になりました。どうもその腕時計は、結婚すれば主婦になることが普通だった時代、病弱な祖父に代わりずっと働き続けざる得なかった祖母のプライドがつまったものだったようです。

そんな大切なものとも知らず、一時であっても、古ぼけたなどと思った自分を恥じました。そして、その腕時計は修理に出し、再び時を刻んでいます。私はこの腕時計をいつまでも大切にしたいと思っています。